(著者撮影:有明アリーナ)
日本では、環境の観点から(過去のブログにも書いたが)、2020年度末には蛍光灯や水銀灯など水銀が含まれている照明の製造・輸出入が禁止になる。
まだ現場で使用しているケースも多く情報が行き渡っていない中で、あと2年で生産がされなくなってしまう。
ただ、日本国内で使用されている全ての現場が2年でLED化は出来るとは到底思えないので、非常に大変な状況が目に浮かぶ。
既存の照明に関連する様々な器具や部品などもここにきて値上がりし始めている。
2年後の管球の製造中止を踏まえ、その頃までにLED化が出来ない現場は大量に管球を在庫として確保していく必要がある。大変だ。
その後の交換を見据えて在庫品の購入を進めているトレンドが一部で発生しているせいか、この半年でバラストレスランプなどは値段が2倍になった。既に管球の在庫が手に入りにくくなり、ネットなどで製品を探しても出てこない照明の器具も非常に多くなってきている。
そのうちに、既存の製品や使用している照明の安定器など製品やパーツの奪い合いになり、価格が大幅に上がりLED製品より高くなる可能性も十分にある。
実際に私の家の洗面化粧台で使用しているリネストラランプはすでに生産が中止になり、海外からの輸入もされないので今後切れたら大変なことになる。海外から輸入された照明関係は、今はほとんど手に入らない。
実は欧州連合(EU)でも日本と同じような取り組みがされている。
(著者撮影:ヨーロッパの方々)
一般的に非常に多く使われておりエネルギー効率の悪い、ハロゲン電球の販売禁止がこの9月1日から施行された。
しかし、今回のこの禁止措置はEUエコデザイン規則の中で、定められていた。
2009年に制定後、2012年、2015年と2度も改定され、指向性照明(住宅や業務用の照明)、LED電球や関連機材の技術的な規制を定めてきており、白熱球の販売はすでに禁止されているのだ。
これまで改定を何度も繰り返しながら、今回が最終ステージ6となり、本来は2016年9月1日から禁止になる予定だったが、2年先延ばしされ、やっと今年の9月1日からになった。買えない人はどうしたら良いのか?という議論が多かった背景もある。
ただし、現時点ではハロゲン電球の在庫品の販売は許可され、オーブン用の低圧白熱電球は今後も使用が認められる。
実際にハロゲン電球の消費電力は約60Wだが、LED化で4Wにまで削減できる。消費電力を93%も削減出来るのだ。
エネルギー効率の悪さでいうとEUのガイドラインでは最低ランクの「D」の評価がついていたのだ。
しかも寿命も4,000時間ほどで切れるハロゲン電球から、LED化をすることで40,000時間ほどになる。寿命が10倍ほどになる。
ハロゲン電球はいわば熱の塊のようなもので、欧米では、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲンガスを微量導入することで、通常の白熱電球よりも照度を上げた製品で、色の温かさも含めて各家庭で60年に渡り非常に愛用されてきた電球だ。
しかし消費電力も高く、電球の寿命が4,000時間ほどで非常に短いのが特徴だった。
(著者撮影:ハロゲン型LED照明)
今回、欧州がハロゲン電球をLED化することで、ポルトガルの1年間に使用する消費電力分を削減出来ると試算している。
電球を全てLED化することで、国1つの1年分の消費電力が賄えるのは、非常にインパクトある改革だ。
今後も効率の悪い電球を段階的に廃止することで、2025年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を1520万トン削減できるとの見通しを示している。
さらにEUが輸入する石油で換算すると、年間およそ7500万バレル削減できると見込んでいるのだ。
しかし日本と同じで、急に切替えを市民に押し付けては、家計費の負担などからバッシングを受けると考え、LED化をする為の時間的な猶予を儲けた。そして期限をこの9月まで先延ばししてきた。
東京都ではLED化キャンペーンをしてるのをご存知だろうか?
白熱球を1個持っていくとLED電球1個と無料で交換してくれる。これはLED推進派の小池知事の政略だが、なかなか進まない。そもそも家庭用の白熱球を街の電気屋さんに持っていくのが面倒であったり、町の電気屋さんが家の近くにない場合、交換自体が大変だからだ。
そこで一向に交換するキャンペーンが進まないので街を活性化する為に仕掛けた街の電気屋さんでの無料交換から、家電量販店への持ち込みでも無料で交換するキャンペーンを始めた。それでもなかなか進みづらい。
結局のところ、家庭内の全ての白熱電球を無料でLED電球に交換してくれるのならお店に行くのだろうが、たった1個を交換する為にわざわざ行くのは交通費や労力を考えたらあまりメリットがない。
しかも、白熱電球をLED電球にする場合、どういう色合いやどういうW数、どういう形を選んだら良いかなど一般の素人には難しい場合も多い。
特に弊社でマンションLED化プロジェクトで、共有部をLED化した後に、個人が所有する専有部もLED化したいという話を頂いてLED化の話をさせてもらう際も住民の方は、自分の住む部屋でどんな照明が使用されているか分かる人は意外だが、ほとんどいない。
それが現状だ。だから、簡単に無料でLEDに交換出来るといっても、免疫のある人でないと実際は難しいのだ。
しかも、東京都が無料でLED電球に交換するキャンペーンを知らない人も多い。